急速に進歩している吸入剤について(その10)

さて その10ですが吸入剤はどのような病気の治療に用いられているのでしょうか?



① 喘息


② COPD(慢性閉そく性肺疾患)


③ インフルエンザ 


④ 糖尿病(吸入式インスリン)


①、②はおなじみですよね!


使用される薬も


ICS:inhaled corticosteroid(吸入ステロイド薬)

LABA:long-acting βーagonist(長時間型β2作動薬)

SABA:short-acting βーagonist(短時間型β2作動薬)

LAMA:long-actinng musucarinic antagonic (長時間型抗コリン薬)


上記4種類です。




③には インフルエンザ治療薬のリレンザ™とイナビル™の2製剤があります。


どちらも


DPI:Dry powder Inhaler(ドライパウダー吸入器)を用いています。


リレンザ™はグラクソスミスクライン社製 

吸入型製剤の実績は皆さんよくご存じですよね!(グラクソの回し者ではありません 笑)


イナビル™は第一三共製、つまり日本製ですね!


リレンザ™は1日2回5日間連続で使用する必要がありますが、


イナビル™は1回の投与でOKです。


この差は有効成分の体内での持続性の違いによるもので、製剤によるものではありません。


リレンザ™(有効成分 ザナミビル)も

イナビル™(有効成分 ラニナビル)も


添加物はドライパウダーとするための乳糖(錠剤にも顆粒剤にもよく使われる)だけでこの点


①の喘息治療、②のCOPD治療に用いられているものと同じです。



④の糖尿病治療薬ですがいわゆる吸入型インスリン製剤です。



2006年米国でファイザー社によってExubera™の商品名で

莫大な資金を使ってキャンペーンをおこない大々的に発売されましたがわずか1年で撤退しました。


理由は全く売れなかったからです。


使い方はいわゆる短期型インスリン製剤と同じです。


① 吸入製剤は注射剤の短期型インスリン製剤よりもさらに効果発現までの時間が短い

② 製剤を冷蔵庫に保管する必要がない

③ 注射針を使わないので痛みがない


など


製剤としてのメリットがありますが、


エクスベラ™は

①吸入装置が大きすぎる(テニスボール大)

②最近の超極細芯はほとんど痛くない

③冷蔵庫なんてどこにでもあるし、万年筆型の外観の注射器に比べて異様

④高価(すでに特許切れしていた通常型インスリン製剤にしては・・・・・)

⑤注射を怖がる18歳以下の小児(I型患者)への使用ができなかった。

多くの短所があり


結局、医師にも患者にも支持されない製剤でした。



携帯性を向上させたデバイスを米Mannkind社が開発Afrezza™の商品名で2015年にFDAの承認を得て米国で発売されました。


莫大なライセンス料をファイザー社に支払ってサノフィ社が世界中で開発を行い小児への適用も取得しましたが、2016年1月サノフィ社はこの事業から撤退しました。


サノフィ社の撤退理由はファイザー社と同じで予想したほどの売り上げが上がらなかったからです。


しかし、米Mannkind社はAfrezza™の販売を続けており地道な努力が継続中です。


インスリンの経肺投与製剤には、


① 使用の簡便さ

② 全く痛くない


などの他に


① インスリンの吸収速度と効率が良い

② 針などの医療用廃棄物が出ない


などの利点があります。


一方 肺機能の低下(FEV-1値低下)や咳などの副作用がありあす。


どちらも使用中止により、副作用は消失しますが・・・・・・・・



喘息やCOPDに吸入型製剤が使われ始めてから今日のようになるまでには皆さんご存知のように長い年月がかかっています。



自己投与型の注射剤が吸入剤に置き換わることはあっても

その逆はないと思います。


将来、吸入型製剤を使っている子供がⅠ型糖尿病患者か、喘息なのか?



そんな時代がくるかもしれませんね?

薬の千夜一夜物語 漢方薬編

ヨーロッパでは漢方薬のようにハーブを処方箋薬として使います。 インドにはアーユルベーダを利用した医学があります。 日本の漢方医学は中医学とは異なり西洋医学の考え方を織り込んだ漢方薬です

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