新型コロナ(COVID-19)抗原検査の解説を薬剤師がしてみた。
新型コロナウィルス(COVID-19)の抗原検査キット「エスプラス SARSーCoV-2」が富士レビオ社から発売され、5月13日に保険収載(600点)されました。
ちなみにPCR検査の場合、大学病院など院内で検査を行う場合1,350点、保健所や民間検査機関へ依頼する場合(輸送を伴う場合)1,800点です。
原理
イムノクロマトグラフィー法(臨床検査振興協議会HP参照)
① 表面処理した金コロイド粒子上にコロナウィルス(COVID-19)を抗原とする抗体を結合させておきます(標識抗体)。
② 検査キットにはコンジュゲートパッドと呼ばれる①の標識抗体を含んだ層と、テストラインに抗原特異的抗体、コントロールラインには標識抗体特異的抗体が塗ってあります。(下図参照)
③ キット付属のスワブを鼻腔奥に行き止まる部位まで挿入して粘膜を採取し、付属の液体に浸漬したサンプルをサンプルパッドに滴下します。
④ 約30分で毛細管現象によりサンプルパッドに滴下されたサンプル液はセルロース膜上に展開されテストライン、コントロールラインを通過し呈色します。
⑤ 新型コロナウィルス(COVID-19)を含んだサンプルの場合はテストライン、コントロールラインとも発色します。
➅ 新型コロナウィルス(COVID-19)を含まないサンプルの場合はコントロールラインのみ発色し標識抗体がサンプル液とともに展開されたことを確認します。
⑦ 余分な水分は吸収パッドで液漏れを防ぎます。
長所と短所
妊娠検査やインフルエンザ検査にも使われており迅速(約30分)で特別な装置が不要ですが、感度が低いため陰性でもコロナウィルスの数が少ないだけの偽陽性の可能性があり、確定診断をする場合PCR検査をする必要があります。
最後に
PCR検査の簡単な解説はアメーバブログ版薬の千夜一夜物語に記載しました。
日本でPCR検査数を増やせない理由は
① 開発の遅れによる検査試薬の不足
② 鼻咽頭拭い液などの検体からRNAを抽出、精製する煩雑な作業(感染リスクあり)
PCRは分子生物学上の基盤技術です。
韓国、台湾、中国などには遺伝子を扱うバイオベンチャーが星の数ほどあります。
民間企業がロボットを用い検査技師に感染のリスクなく大量にサンプル処理するシステムを構築し、韓国のドライブスルーやウォークスルー検査は可能となりました。
民間の基盤技術力の差が日本のPCR検査数が世界の中で際立って少ないという結果をもたらしているのです。
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