ニキビ治療薬(8)ゲンタシン軟膏
ニキビ治療薬 本日はゲンタシン軟膏です。 ゲンタシン軟膏の主成分はゲンタマイシンで、いわゆるアミノグリコシド系抗生物質です。
その作用機構はタンパク質の合成阻害でニキビ治療の他にも、細菌感染症やとびひなど様々な皮膚炎に使われ、ニキビ治療薬以外にもよく使われるお薬です。
テラコートリルと違いステロイドは含んでいないので、細菌感染を起こしていないニキビには無効です。 飲み薬に比べ、塗り薬は副作用は少ないですが
【かゆみ】
【赤み】
【腫れ】
などが報告されており注意深く経過を観察する必要があります。
まれに、耳鳴りやめまいといった副作用も報告されています。 このような副作用を示した場合、すぐに他の薬に変える必要があります
ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質です。 クリンダマイシンのところで書きましたが、欧米では、かつて、アミノグリコシド系抗生物質はニキビ治療に繁用されたため、今ではニキビの原因菌の60~80%がアミノグリコシド系抗生物質に対して耐性を持ってしまい、アミノグリコシドと交差耐性を示す、クリンダマシンも欧米ではニキビ治療に使われなくなってきています。
さて、細菌はどうやって薬物に対して耐性を獲得するのか?ですが、ゲンタマイシンを始めとするアミノグリコシド系抗生物質でみてみましょう
アミノグリコシド系抗生物質の作用機構はタンパク質の合成阻害です。
細菌のリボソーム内の活性部位には、RNAでできた分子スイッチが存在しこのスイッチはその立体構造をON/OFF間で変化させることにより、正しいアミノ酸が結合したtRNAを選別して取り込み、正確なタンパク質合成を繰り返して増殖します。
アミノグリコシド系抗生物質は、細菌の分子スイッチのON状態に特異的に結合して、スイッチのON/OFFの切り替えを出来ないようにして正確なタンパク質の合成を行えないようにします。
これに対して細菌は、突然変異(16S rRNAの1408番目のAをGに変異させる)により耐性を獲得します。 しかし、正確なタンパク質合成をしてきた分子スイッチを変異させることは、細菌にとって自身の生命を脅かす可能性のあるリスクの高い行為でもあります。
つまり、変異させることにより、分子スイッチが正常に作動しなくなり、正確なタンパク質合成が行えず、耐性は獲得したが自身が生き延びることができなくなってしまう可能性があります。
最後に何が言いたいかですが、細菌にとっても耐性の獲得と言うのは、自身の生命の存続をかけた悲壮な戦いであるということす。 そのような戦いにまで追い込むような過剰な使い方は避けたいものです。
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