アトピーの塗り薬(その2)プロトピック(ナノテクノロジー製剤)
プロトピックとは
プロトピックは免疫を抑制して、アトピーを治す塗り薬です。 この点ではいわゆるステロイドと同じではないかと思われる方も多いとは思いますが、プロトピックの主成分であるタクロリムスは旧藤沢製薬(元アステラス製薬)が開発した免疫抑制剤(移植手術後の拒絶反応を抑える薬)を塗り薬として開発し直したものです。
注射剤や経口剤が先に開発されプログラフの名前で発売されました。 従来の免疫抑制剤シクロスポリンの100倍の効果を持つ画期的な免疫抑制剤として開発されました。 ちなみにプログラフの名前の由来はプロテクト(保護)とグラフト(移植片)の組み合わせだそうです。
効果
説明は長くなりましたが、ステロイド以外のアトピーの薬としては約40年ぶりに開発された薬です。
このタクロリムスですが分子量が800を超え、更に水も油にもほとんど溶けません。 一方ステロイド類ですが分子量は400-500程度で水にはほとんど溶けませんが、油にはよく溶けます。
そのため、ステロイドは油を基剤とした軟膏剤または、界面活性剤を加えたクリーム剤、ローション剤等多くの剤形がありますが、プロトピックは軟膏のみです。
その軟膏もタクロリムスが水にも油にも溶けないため、特殊な製法で作られています。 タクロリムスは水にも油にも溶けないのですが、エタノールの様にその中間の性質を持ついわゆる有機溶媒によく溶解します。
製剤
そこで、ここからは私の専門分野であるナノテクノロジーの出番です。
この製法いわゆる液中分散法と呼ばれる方式で、まずタクロリムスを溶媒である炭酸プロピレンに溶解した後、強力な撹拌機を用いてサラシミツロウや白色ワセリン等の油脂性の基剤と機械的に混和します。
この過程でタクロリムスは全く界面活性剤を用いないで製造しています。 一般にナノカプセルやマイクロカプセルもこのようにして製造することが可能ですが、少量ですが界面活性剤を加えて分散後の安定性を確保します。
プロトピック軟膏はナノテクノロジーの手法で油中に均一にタクロリムスを分散させていますが、界面活性剤を用いていないため不安定な微細な粒子として存在しています。
最後に
このため、ステロイドは抗生物質や保湿クリーム等と混合して様々なメリットを出す製剤として用いられていますが、プロトピックは混合するとせっかく微細に分散させたタクロリムスが析出してしまい効果が大きく減少してしまうため、混合して用いてはいけない製剤となっています。
界面活性剤はご存知の様に刺激性を持ちます。 したがってプロトピック軟膏の刺激性は薬であるタクロリムスの持つ刺激性であり、製剤由来のものではありません。
0コメント