ステロイド製剤の塗り薬(その12)グリメサゾン軟膏(ステロイド製剤なのに脱ステロイド用?)
グリメサゾン軟膏
グリメサゾン軟膏の主成分は脱脂大豆の乾留タールであるグリテールとステロイド剤のデキサメタゾンです。 タール剤は古くからアトピーの治療に用いられてきた薬剤で、かゆみを抑えます。 デキサメタゾンってステロイドだよね・・・・・・・・・?
おっしゃる通り確かにステロイドです。
ちなみになぜステロイド製剤と呼ぶのか? ステロイド骨格を有する薬物だからです。
構造式に拒絶反応を起こす方も多い方と思いますが、漠然とどれも似ているなあ・・・と思っていただくだけで結構です。
この薬には添加物としてβーシクロデキストリンが入っており、ステロイドの体内への侵入を防いでいます。
ステロイドの塗り薬は油によく溶けるため皮膚透過性が高く体内に侵入し全身性の副作用を示します。
しかしグリメサゾン軟膏ではデキサメタゾンをβーシクロデキストリンに包接することで水によく溶ける様にして軟膏からのステロイドの体内吸収を阻害しています。
つまり、塗布した局所にその効果を限定しているわけです。 古くから使われているタール剤と組み合わせ、ステロイド離脱療法の第一歩として特徴のある良い薬だと思います。
シクロデキストリンって?
さてシクロデキストリンですがこちらもナノテクノロジー応用の一分野で最近ではカーボンナノチューブやフラーレン等が有名ですがシクロデキストリンも古典的なナノテクノロジーの一種です。
またまた構造式で恐縮ですが下の図のように環状の構造をしており、この輪の中に先ほどのデキサメタゾンがはまります。
シクロデキスロリンは環状のデキストリンという意味です。 デキストリンは皆さんもよくご存知のように糖の一種で水によく溶解します。
上の輪の中にデキサメタゾン(油に溶解する)を取り込むことにより、油によっく溶けるものを水によく溶けるようにその性質を変えてしまいます。
余談
最近の柔軟剤(洗濯用)は良い匂いがするものが多いですが昔の柔軟剤は柔らかくするためだけのものでした。 P&G社の技術者が柔軟剤にシクロデキストリンを混ぜて使うことを思いつき、当初は洗濯物の汗や皮脂などの油汚れを取るためにシクロキストリンを混ぜていました。
この際、配合量を工夫すると洗濯物の匂いがなくなることを見つけました。 体内の匂いの元は油であることが多いです。
アブラ=臭いというイメージが有るかと思いますが、ベンゼン環を芳香族と呼ぶことからも良い匂いもアブラであることが多く。
現在の柔軟剤が良い匂いがするのはあらかじめ良い匂いのする物質をシクロデキストリン中に封入しておき、洗濯中に良い匂いの元が徐々に離れていき空になったシクロデキストリンが洗濯物の皮脂汚れを取るという仕組みになっているからです。
最後に
何度も繰り返していますが、ステロイドの塗り薬は効果は強いですが、症状を抑えているだけです。 やはりだんだんと弱いステロイドに切り替えて最終的に保湿剤のみにアトピー性皮膚炎の患者さんにとって大事なことだと思います。
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