急速に進歩している吸入剤について(その17)
本日はその17で3種類の有効成分(ICS+LAMA+LABA)すべてを含む吸入剤についてです。
① ICS:Inhaled CorticoSteroid(吸入ステロイド薬)
② LAMA:Long Acting Muscarinic Antagonist (長時間作用型抗コリン薬)
③ LABA:Long Acting βーagonists (長時間作用型β2刺激薬)
商品は
2019年5月発売のテリルジー™(グラクソ・スミスクライン株式会社)
と
2019年9月発売のビレーズトリ™(アストラ・ゼネカ株式会社)
の2種類です。
まずは
テリルジー™ですが、有効成分は下記3種類
フルチカゾンフランカルボン酸(ICS)+ウメクリジウム臭化物(LAMA)+ビランテロールトリフェニル酢酸(LABA)
用法は1日1回吸入で
デバイスはエリプタで(DPI:Dry Powder Inhaler)ドライパウダー噴霧器を用いています。(下図参照)
適応症は慢性気管支炎と肺気腫です。
次に
ビレーズトリ™ですが、有効成分は下記3種類
ブデゾニド(ICS)+グリコピロニウム臭化物(LAMA)+ホルモテロールフマル酸塩水和物(LABA)
用法は1日2回吸入で
デバイスはエアロスフェィアと名付けられたエアゾール剤を用いています。
エアロスフィアデリバリーテクノロジーとしてアストラゼネカは大々的に宣伝しています。
以下にエアロスフィアの簡単な作り方を記載します。
① 細胞表面に多量に存在するリン脂質のⅠ種である、ジステアリールフォスファチジールコリン(DSPC)と無水塩化カルシウムを混ぜて水中でエマルジョン(乳液)を作ります。
② このエマルジョン(乳液)を噴霧乾燥法(液体を乾燥させて固体にする装置)で乾燥させ、軽量の多孔質担体(porous particle)をつくります。
③ 有効成分の結晶はジェットミル粉砕機(結晶を最も微細化できる粉砕機)を用いて微細結晶化し
④ これにテトラフルオロエタン(液化噴霧剤)を加え高圧ホモジナイザー(ナノ粒子を作る時にも使われる装置)を用いて混和することで多孔質担体と微細結晶化した有効成分を吸着させます。
⑤ 上記が定量噴霧式デバイス(pMDI:Pressured Metered Dose Inhaler)の中身となります。
⑤ 噴霧器自身は通常のエアゾール剤の噴霧装置です。(下図参照)
➅ 非常に手間暇をかけて、作られた製剤で肺気腫等、吸気力の低下している患者さんにでも負荷なく使える製剤として設計されています。
以上 下記資料より
1)Amber DotyJon SchroederKou VangMark SommervilleMervin TaylorBrad FlynnDavid Lechuga-BallesterosPeter Mack
February 2018, Volume 19, Issue 2, pp 837–844 AAPS PharmSciTech
2)ビレーズトリエアロスフィア56吸入 インタビューフォーム
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